やまんば山のモッコたち

絵本 やまんば山のモッコたち

絵本 やまんば山のモッコたちの表紙です

絵本 やまんば山のモッコたち
◆年齢◆
読んであげるなら6才以上。
自分で読むなら小学校中学年から。

◆ジャンル◆
◆ファンタジー絵本

◆シチュエーション◆
◆おたんじょうび絵本


◆ともだちとあそぼ!絵本


富安陽子 作:降矢奈々 画 福音館書店

初版年月日:2000年11月30日 ISBNコード:4-8340-1723-0

288ページ 21X16cm 定価1575円(本体1500円 + 税75円)

通常版はこちら!  定価1575円(本体1500円 + 税75円)
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霜里村の北、やまんば山を囲む山々や川、そして池や沼には、たくさんのモッコたちが住んでいるらしい、でもそこへの入口が開くことはめったにありません。

このお話は、雪深い冬のあるひ、霜里村のはずれの雑木林で、「やまががし」に、啓太が、やまんば山への入口を教えてもらったことに始まります。啓太がやまんばワールドの入口の大松に案内された日は、たまたま山姥の娘「まゆ」が生まれた日でした。「山姥の赤ん坊は生まれるなり、空を飛び回る。きっとそろそろ山から吹き下りてくるで」と大松のいう通り、啓太の前にあらわれます。ふたりはリンゴを仲立ちにすぐ友達になります。
こうして数々の啓太とまゆの冒険、山姥やモッコたちの不思議な生き方のお話です。

この本には、「まゆ」の誕生と啓太と友達になってから、「まゆ」の誕生会まで、やまんば山を中心とする冬・春・夏・秋の、8編のお話(1冬語り、2柏林、3山からの贈り物、4やまんばの春、5ガタロ沼の水曜日、6やまんば山の夏、7やまんば餅、8星の夜まつり)がおさめられています。この「やまんばのむすめまゆのおはなし」には続編として、童話ではなく、絵本として「まゆとおに」「まゆとブカブカブー」「まゆとりゅう」があり、その全体でやまんばワールドを形成しています。

やまんばワールド
山姥の存在や住処については「まゆとおに」の解説をお読み下さい。
このやまんば山の世界について、本の見開きの地図(1枚目の画像)をご覧下さい。
まず地図の一番下に霜里村があります。地図の右側の真ん中にやまんば山、そのてっぺんが山姥の家です。ここで「まゆ」は生まれました。やまんば山の麓に雑木林があって、そこに大松がありますね。ここが啓太とまゆが最初に出会ったところです。やまんば山からは小川が流れ出していて、そこのはガタロ沼があります。この沼が河童たちのすむところで、「ガタロ沼の水曜日」の舞台。その下の柏林が山姥の食料庫です。やまんば山のとなりに「となり山」がありますが、ここがまゆと啓太が、「星の夜祭りで、「世界一大きなケーキ」を焼いた場所。他にも「やまんば山の春」で、買い物をする「逢魔ヶ辻」のなんでも屋は、霜里村から西へ霜里峠に向かう途中にありますね。

やまんばワールドの入口と出口
やまんばの世界に行くことができるのは、今のところ啓太とこの本と「まゆシリーズ」の読者だけのようですね。それにはやはり資格が必要のようです。啓太が行くことができたのは、「あああ、もっと奥まで行けたらな。こんな日には林の奥で、きっとなんかおもしろいことがあるにきまっているんや」とふと口にした言葉を「やまががし」が聞いたからですね。啓太のお母さんもその資格がありそうです。というのは、まゆの誕生会に、自分の大切な人形をもたせますからね。
ところで、その入口は雑木林の大松のところでした。そこからだけやまんばワールドに入ることができます。
ところが、もうひとりやまんばと普通に話ができる人間がいます。それは「逢魔ヶ辻」のなんでも屋のおじいさんです。このお店で、山姥は山ではとれないものを時々買っているようです。やまんばは人間の世界へいくときだけは、雲にのっては行かないですね。どうも「逢魔ヶ辻」だけが「モッコたち」の、人間の世界への出口のようです。昔から「むこう側」のものたちが人間の世界にやってくる場所は決まっていました。だからどこの村や町にも「逢魔ヶ辻」のようなところがありました。霜里村ではここのようです。なんでも屋のおじいさんはそのことをよく知っていたのでしょう、村からと山からと両方のお客さんをあてにして、ここに店を開いたのです。現在の町や都会の発祥の地であった「市(いち)」は、元来こういった境や辻、河原にたったのです。

モッコたち
この本で「モッコたち」とは、大きいものでは天狗、雷(神鳴り)、小さいものは「木魂(こだま)ーなんと、その食べものは落ち葉だったんですって!)」、「白ボウズ(疲れてきて傷ついた星を土に埋めて再生する役目をしているらしい)」など、山姥も含めて、その仲間だそうです。普通昔ばなしや伝説では、「山のものたち」と総称されていて、そこには山の動物たちも含まれています。おそらく霜里村地方では、動物たちを除いた山のものたちを「モッコたち」というのでしょうね。「星の夜祭り」では、山のものたち全てが「まゆ」の誕生会に集まりました。





内容紹介です

大胆で細やかな山姥や、やまんば山の豊富な食べものと、モッコたちとの不思議な交流や冒険、啓太との友情のなかで育っていく「まゆ」のお話。

『啓太の住む霜里村を取り囲む山並みの北側に、山姥山(やまんばやま)という小高い山がありました』

モッコたちの暮らす霜里

この山は、モッコたちが住むと言われる「入らずの山」で、絡み合う雑木と棘つる草に守られて人はめったに入る事はできません。
モッコというのは人間でもない、動物でもない生きものたちのことです。山姥・カッパ・天狗・雪女・鬼・山爺・木霊(こだま)・白ボウズなどなどがいます。
でも、ほんのときたま山姥山の入口がぽっかり開くことがあります。そんなときには、まっすぐ山姥山のてっぺんの三本松の下の家を訪ねるといい、そこには山姥の一人娘「まゆ」が待っています。

冬語り
霜里村に住む啓太は、朝起きると、雪が村をすっかり覆っていましたので、ゴム長をはき、赤い毛糸の帽子をかぶると、何か面白いことを探しに出かけました。
霜里村の北の端、山姥山に連なる雑木林までやってきました。

「あああ、もっと奥まで行けたらな。こんな日には林の奥で、きっとなんかおもしろいことがあるにきまっているんや」

そう言ったとたん、冬眠途中にお腹空かせて目覚めてしまった「やまかがち」が声をかけてきました。

「もしなにかくれたら、山の麓まで案内したってもええで」

こうして山姥山のふもと、大きな松の木まで連れていってくれました。やまかがしは、この松の木に目印をつけておくこと、日が暮れたら山から出られなくなると教えてくれました。
啓太は赤い帽子を松の枝に掛けておくことにしました。
そのときです。大松の枝からひとかたまりの雪がバサリと啓太の頭に落ちてきて、

「たった今、山の頂上で山姥の娘がうまれたで」

と大松がいいました。

「それが、どうしてん」
「山姥の赤ん坊は生まれるなり、空を飛び回る。きっとそろそろ山から吹き下りてくるで」

いそいで大松の根方の洞に身を隠したとたん、ピカッと鋭い稲妻が空をわって山おろしがどっと吹き下りてきました。

「ちょっとあんた、なにしてんの?」
「ははぁん。おまえが山姥の娘やな」
「そうや、まゆって言うねんよ」
「リンゴ食べへんか」
「リンゴってなんやの?」
「うん、おいしいわ。あんた、なんて名?」
「啓太や」
「そしたら、友だちになろ」
「ぼくは人間やで、空も飛べへんしなあ」
「だいじょぶやって。あたしが雲に乗せたるから」

そしてまゆは小さな竹笛を啓太にわたしました。

「それはな、北の呼ぶ子っていうねん。それを吹けばいつでもあたしが飛んでくるからね。じゃまたね」

まゆは飛んでいってしまいました。
山姥の娘と友だちになるなんてすごいと思いながら、啓太はもう少し東へ歩くことにしました。
「あれ、鳥とちがうぞ」と思っているうちに、啓太はまるで雪嵐の底に立っているようで何も見えなくなりました。
それは雪女と白い犬たちでした。
雪女は「寒立馬(かんだちめ)」を掴まえようとしているというのです。寒立馬というのは北の空から地上へ使わされる馬で、冬を運んできて雪をふらせ、氷をはらせるという。そして寒立馬を掴まえる手伝いをしろ、そうでないとお前を凍らせるというのです。
啓太はとっさに「北の呼ぶ子」を思い出し、急いでそれを吹きました。すると、すぐさままゆが雲にのってやってきて、啓太を乗せ、雪女が追っかけてくるのを振り切って山姥のもとへにげ帰りました。
こうしてふたりは「寒立馬」を助けるために大活躍することになったのでした。

柏林
(略)

山からの贈り物
(略)

やまんば山の春
『山姥は山の頂上のてっぺんの枝に立って、まっすぐ南の空をながめていました』

昨日まで雪雲が重くたれこめていた空が、今日は透けて見えます。山姥は南から吹いてくる風を二・三度かぎました。

「まゆ、帰っておいで。じき春一番が吹き荒れるで」

山姥は大きな鍋を火にかけました。

「山姥汁を作っておかんとな」

春一番がひと吹きすれば、山じゅうが目をさまします。そしたら友達がみんなはらぺこで、春の挨拶にやってきます。
春一番が吹いた日から、山は日一日とたしかな勢いで春の色を増していきました。
一番最初に春の挨拶にきたのは、東の雑木林の木霊たちでした。

「うわぁ、お母ちゃん。ネズミがいっぱい」

でもそれは、顔つきは人間のやんちゃボウズに似ていて、体はネズミのようでした。

「あれは、木魂や。まゆ、木魂はいつも落ち葉しか食べへん。でも、春の最初の日だけは、あたしのヤマモモのジャムを食べにくるんや」

まゆはヤマモモを一つずつ配ってまわりました。
次ぎに来たのは古ダヌキ。古ダヌキには暖かな山姥汁と風邪薬をやりました。二日目からは、山じゅうの生きものがつめかけました。ヘビ、クマ親子、カッパ一族。最後は大ガマ。

「これで山じゅうが目を覚ましたようやな」

山は十日前と、ガラリと様子を変えていました。

「さあ、今日は村はずれまで買い物に行こうかね。霧もでたし」

山姥は床下から大きな瓶を引き上げました。

「これは、山姥のお宝や。大昔から伝わる大判小判、買い物にはこれがないとな」

山姥は瓶から小判を一枚取り出しました。
ふたりは今日は雲にのって行くわけにはいきません。村はずれの「逢魔ヶ辻」にいくからです。
ふたりは緑のさざ波の波間を抜けて、やっとこさ大きな道しるべが立っているところに来ました。片一方の矢印は「霜里村」、もう片方には「霜里峠」を指していました。そこに一軒の古ぼけた家がありました。

「ほうら、これが逢魔ヶ辻のなんでも屋や」

店には、丸いめがねにしわくちゃ顔、真っ白い髪のおじいさんが座っていました。

「おや、こりゃ、またこんばんは。今夜あたり、あんたが来るやろうと思っとったんや」
「きょうは、春の買い物をすませてしまおうと思ってね」

山姥の買い物は、山ツツジの布5m、ハルジオンの布2m、山ルリ草の布3m、白砂糖20k、ザラメ20k、黒砂糖10k、塩20k、小麦粉20k、お酢3升、それに竹ぼうき、チリトリ、赤のゴムマリでした山姥は代金として小判を一枚わたしました。

「こりゃ、ちょっと、多すぎるな」

おじいさんは、梅とお茶とハッカの味の赤いあめ玉をどっさり袋に入れてくれました。

『空にはたくさんの星が光っていました。あしたもきっと晴れるにちがいありません。霜里の春はまだ始まったばかりでした』

ガタロ沼の水曜日
(略)

やまんばの夏
(略)

やまんば餅
(略)

星の夜祭り
空がはっとするほど高くなりました。この季節、啓太は里の遊びで忙しく、まゆのこともすっかり忘れていました。
ところがその朝のこと、一羽のカケスがけたたましく鳴きながら飛んできました。

「ソクタツ、ソクタツ」
「ぼくに手紙だ」

『北山頂上三本松 山姥』からでした。
それは「まゆ」の誕生会招待と、その準備を手伝って欲しいといものでした。出かけようとすると、お母さんが自分の大切な「おぼこさん人形」を持たせてくれました。
雑木林まで走っていくと、まゆは迎えにこず、雲だけが待っていました。啓太は上手に雲を乗りこなし、頂上の広場を空から見渡しました。広場には大きなかまどが十三出来ています。

つめのかまどの大鍋で〜

「こんにちは、まゆは? ぼくはなにをしたらええの?」
「よう来てくれた。あんたはまゆのケーキ焼き手伝ったって」

行ってみるとまゆは、子どもふたりぐらいが乗り込めそうな木鉢で、卵をすっかり泡立て終えたところでした。
こうしてふたりは、ケーキの元の入った鉢を山のてっぺんに運びました。お日さまに近いほどケーキはうまく焼けるのです。やがて甘い匂いのかげろうが立ち上りはじめ、ふくらみ始めました。
どんどん、どんどん、ふくらむことふくらむこと。
木鉢がめりめり音をたて割れました。でもケーキは膨らむのをやめません。木よりも高く空へ空へ。

「おばけケーキや」
「だって、ちゃんと、本のとおりやったのに…」

ふたりは困り果てました。
そのとき、
「こりゃいったいなにしたんや?」空からやまんばの声がしました。

「あほやな、このケーキは冬用のケーキやないか」

秋のお日さまは中火、弱火で焼くケーキの元には火力が強すぎてふくらんでしまったのでしょう。三人は大笑いしました。

「今日は大勢お客がくる、まあええやろ、まだ手伝って欲しいことがたくさん」

三人は雲にのって山姥山に向かいました。
空から見ると、山の上に別の山が生えたみたいでした。

「世界一のケーキや」

山の広場では、十三個の大鍋がゆげをたてています。
ひとつ目はヤマモモの砂糖煮、二つ目は川魚の甘露煮、それからクルミの蜂蜜煮、かやくご飯、やまんば汁、やまんば餅、魚の蒸し焼き、焼き魚、焼きキノコ、焼き栗、魚のフライ、そしてクリームスープ。ふたりは火加減したりかきまぜたり大忙しです。
やまんばは広場にこんな看板をたてました。

「まゆの誕生会へいらっしゃったみなさまへ。
 今晩にかぎり、主席者同士の、追い掛け合い、食べ合いはご遠慮ください」

そのうちふとまゆは、あの嫌な「雪女」も招待しようといいはじめました。
やまんばは、
「アイスクリームをつくるのを忘れていたようやな。今から万年雪をとりにいったんではまにあわへんし…。ここは雪女に手伝ってもらったほうがよさそうやな」といいました。
それで、ふたりは眠り谷に迎えにいくことになりました。
帰ってみると広場は大変なさわぎになっていました。トガリ耳のキツネ一族、イノシシ一家、木魂たち、天狗、雷、うさぎ家族、河童たち…。
まゆと山姥はおめかしして、さあ誕生会の始まりです。
みんなはてんでに「おめでとう」と叫びました。
あの山のようなケーキは、みんなよじ登ったり、潜り込んだりして、ほんの少しの間にきれいさっぱり食べ尽くされました。
「まゆ、これ、やるわ」と啓太がいいました。
まゆは「おぼこさん人形」をみるなり、目をまん丸くして息をのみました。そしていきなり人形を抱きしめ、幸せそうに笑いました。
山姥は、お客たちが食べ疲れ、ぼんやりしているのを見て、
「山守の爺さん。なにか一曲やってくれへんか」と言いました。じいさんは笑って、懐から葦笛をそっと口にあてました。
まゆはうれしそうに山姥のひざにちょこんと座り込みました。山姥は歌い始めました。お客たちはみんなうっとり。
啓太は雲一つない夜空を見上げました。





読み聞かせのポイント

小学校低学年には読んであげてください。「まゆ」誕生編の冬語りだけ先に読んであげて下さい。あとは季節の順番にならんではいますが、長いのと短いのがあったりしますから、読む時間でどれを読むか決めたらいいと思います。
また、もし、この続編の「まゆとおに」などの「やまんばのむすめ まゆのはなしシリーズ」を読んでいなければ、その絵本も読んであげるか、自分で読むようにしたら、ぐっとその世界が広がります。
小学校中学年以上では、おそらく、啓太とまゆの出会いまで読み進むと、がぜん面白くなってきますので、きっと夢中になるはずです。

絵本 やまんば山のモッコたち
◆年齢◆
読んであげるなら6才以上。
自分で読むなら小学校中学年から。

◆ジャンル◆
◆ファンタジー絵本

◆シチュエーション◆
◆おたんじょうび絵本


◆ともだちとあそぼ!絵本


富安陽子 作:降矢奈々 画 福音館書店

初版年月日:2000年11月30日 ISBNコード:4-8340-1723-0

288ページ 21X16cm 定価1575円(本体1500円 + 税75円)

通常版はこちら!  定価1575円(本体1500円 + 税75円)
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