すみ鬼にげた

絵本 すみ鬼にげた

絵本 すみ鬼にげたの表紙です

絵本 すみ鬼にげた
◆年齢◆
読んであげるなら6才以上から。
自分で読むなら小学校中学年から

◆ジャンル◆
◆ファンタジー絵本

◆シチュエーション◆
◆おでかけしよう!絵本


岩城範枝作 /松村公嗣絵

初版年月日:2009年11-04月 福音館書店

ISBN:4834024717  ISBN13:9784834024715

80ページ 25X20cm 定価1575円(税込)

通常版はこちら!  定価1575円(税込)
「えほんおじさんセット」はこちら!  セット価格1775円(税込)

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今から300年前、時は元禄時代、すみ鬼が、大工見習いの少年ヤスとの出会いによって、自らその謎をめぐる物語を語り始めました。

≪仏教と鬼≫
仏像の置かれる須弥壇の四隅には、たいてい邪鬼を踏みしめて立つ四天王像が配置されています。けれども奈良・唐招提寺の金堂の屋根は、4か所の隅を「鬼」が正座して支えているそうです。(画像1参照)すみ鬼のうち、三体は檜で彫られた奈良時代の作。残りのひとつ南西に置かれたすみ鬼は松で彫られた元禄時代の作で、こ の鬼だけが顔も彫り具合もまったく違うそうです。なぜなのかは謎。この「隅鬼」は中国から伝わり、現在日本に残っているのは、唐招提寺と法隆寺の五重塔にだけだそうです。中国には残っているものはないとのこと。歴史上も大変貴重な存在です。唐招提寺とこのお寺を建てた鑑真については、ここ「唐招提寺の公式ページ」をご覧ください。

鬼は、隠(おに)とも書かれるように隠れたものという意味です。この物語でも、すみ鬼はヤスにこういっています。
「…わしらの仲間、闇の世界のものどもだ。目をこらしてみろ。闇のなかで、たくさんの生きものがうじゃうじゃ暮らしておる。人間どもはけっして闇をみようとはせぬからな。お前たち人間に見えているのはこの世の半分。残り半分はわしらのものだ」

そうして、「からす天狗、ねずみの化け物、龍の頭の鬼、にわとり頭の鬼、ひたいに目のある鬼、馬あたまの鬼」などが、満月の夜、闇の森のなかで宴会をしています。そこで力比べなどをして楽しんでいます。この物語でも、「すみ鬼」はこれがやりたくて、千参百年ほどもむかし中国からわたってきたんですね。昔ばなしでも 、たとえば「こぶとりじいさん」では、鬼どもが夜中あつまって踊りを踊ったりしますから、それほど珍しいものではなかったようです。でも、鬼たちは、仏教は苦手だったようですね。四天王に踏みつけられますからね。この物語のすみ鬼たちも、首が肩にめりこみそうになりながら歯をくいしばり、とんでもなく重い屋根を支え る役目をさせられています。

≪主人公の少年ヤスのもつコマ≫
ヤスに会ったすみ鬼のひとりは、日本の鬼と勝負をしたいという願いを叶えたいと懇願します。さて少年ヤスはどうするのでしょうか。そもそもどうして、ヤスだけに鬼の泣き声は聞こえてきたのでしょう。それはヤスが他者のこころを思いやることができたからです。
それを象徴するのが「ヤスのコマ」。コマは小さい時に亡くなった大工の父がノミひとつで作ったもので、その大工技量を証明しています。ヤスはいつもそのコマをみて父親のことを思っていたからではないでしょうか。
「いまにお父のような立派な大工になってやる」と。

実際、大工見習い小僧仲間で遊ぶ時にも、そのコマは、だれよりも速く、そしてながく回りました。そしてヤスが闇の世界のものたちにつかまった際にも大きな力を発揮します。
「これはうまそうな小僧じゃ」
「ただでははなせぬ。なにか面白ことをやってみせろ」
ヤスのコマは、ぶんぶん音を立ててまわったり、飛び回ったりしました。そして鬼の手やおなかの上でまわりました。

コマは不思議なおもちゃではないでしょうか。回り続けることによって、この世界と向こうの世界を結びつける、あるいはその境界を飛び越える力があると思われます。ここでは闇の世界(鬼の世界)と人間の世界(ヤスの世界)とですね。「こぶとりじいさん」の舞や踊りにもその力がありましたよね。

≪さし絵の力≫
圧巻なのは、すみ鬼と化け物たちやその勝負の場面です。鬼や化け物は、古来、蓄積された想像力の形象化です。この本の画家は、そうした継承された形象化に、さらにリアルな観察と想像力を加えています。ですから、それは「大胆かつ繊細な絵」となり、それが奈良時代、江戸時代の「場所の香り」を伝え、物語をより広く深 くしてくれました。





内容紹介です

『今から三百年あまり前のことだ。ミンミンとセミのなく夏の日、ひとりの少年が奈良にある古い寺の門前に立った。少年の名は、ヤス。』
ヤスは小さな道具袋をにぎりしめ、大きく息を吸い込むと寺の敷地に入って行った。
お堂の周りにぐるり足場がかけられ大勢の宮大工が働いていた。

ここは奈良の唐招提寺。今、江戸時代・元禄のおおがかりな修復がはじまっていたのだ。
「おお、ヤス」親方が手招きした。
その日から、ヤスは見習小僧となった。ヤスはみんなに使われ朝から晩まで働いた。
暇を見つけると、仲間の小僧たちとコマをまわして遊んだ。そのコマは父親が作ってくれたものだ。
「今に、死んだお父のような立派な宮大工になってやる」

三か月ほどたった秋の日のこと。
仕事を終えたヤスがお堂の前を通りかかると、
「うぉー うぉー」
誰かが泣いているような声が聞こえる。
どうやらお堂の西南のすみの、軒下あたりからだ。
「だれが泣いているのだろう」
ヤスは声のするほうへ、足場をつたって登っていった。
そりかえった屋根をささえる隅木あたりに目をこらすと、
なんと、一尺(約30センチ)ほどの小さな鬼が、肩で隅木をささえながら正座したまま泣いている。

小さな鬼が〜

「鬼がなぜ泣いている? なぜこんなところにいるのだ?」
鬼は小さな声でぽつりぽつり話し始めた。
「わしは唐の国からきた鬼だ。むかしこの寺を建てた坊主(鑑真大和上)が日本へ仏教を教えようと唐の国を旅立ったとき、こっそり船に乗り込んだ」
「日本の鬼どもとひと勝負したくてな。だが、坊主にみつかり小さな鬼にされ、お堂の屋根を支える四隅のすみ鬼にされた」

「他にも鬼がいるのか」
ヤスはみて回った。北東・東南・北西の隅にも鬼がいた。
鬼たちは、歯をくいしばり正座していた。さぞかし重いのだろう、首が肩にめりこみそうだ。
「たしかにいた。だがどの鬼も動かず声も出さないぞ」
「やつらはあきらめてしまった。すみ鬼になり何も言わず役目をはたしているのさ」
「すみ鬼の役目とはなんだ?」
「すみ鬼は屋根をささえ、疫病や魔ものからお堂を守っているのだ」
「わしは、もう九百年、ここにおる。だが、わしはあきらめきれぬ。うー うー、うぉん」
「たのむ。わしをここからはずしてくれ。行きたいところがあるのだ」

ヤスはすみ鬼の膝の釘をぬき、木槌で少しずつ押し出してやった。
「あっ」鬼が落ちていく。
ところが鬼は、ひょいと宙返りをして地上に立ったかと思うと、伸びをして見る間に大きくなった。
大きくなった鬼は、ヤスをかるがるとつまみあげて肩にのせた。
そして、闇の中を風のようにはしりはじめた。
「満月の晩には、大木の森で鬼たちの集まりがあるはずだ」
鬼は夜の道をびゅんびゅん、走りに走った。

鬼はびゅんびゅん〜

「うぉーっ」
鬼がうれしそうに声をあげた。
すると、闇のなかからいっせいに声がした。
「ひゃっ ひゃっ ひゃっ」
「ふぇっ ふぇっ ふぇっ」
……





読み聞かせのポイント

物語が、さし絵が、想像力を広く深くしてくれますので、絵を見せながら読んでやるだけで、今までにない経験ができるでしょう。

絵本 すみ鬼にげた
◆年齢◆
読んであげるなら6才以上から。
自分で読むなら小学校中学年から

◆ジャンル◆
◆ファンタジー絵本

◆シチュエーション◆
◆おでかけしよう!絵本


岩城範枝作 /松村公嗣絵

初版年月日:2009年11-04月 福音館書店

ISBN:4834024717  ISBN13:9784834024715

80ページ 25X20cm 定価1575円(税込)

通常版はこちら!  定価1575円(税込)
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●作者 岩城範枝さん関連図書
「鬼の首引き」 井上洋介/絵
「木の実のけんか」 片山健/画 

●画家 松村公嗣さん関連図書
絵本製作は、この絵本が初めて。
※愛知県立芸術大学美術学部日本画専攻教授
法隆寺壁画模写、増上寺天井画製作など。

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